AWS Summit で発表された
注目の新サービスまとめ
AIエージェント・分散SQL・VMware移行・S3進化…知らないと損する最新アップデート全解説
今年のSummitはAIとインフラ刷新の2本柱だった
📍 AWS Summit Japan:幕張メッセ開催 / 延べ69,000人超が参加 / テーマ「ビルダーと描く新たな価値創造」
📍 AWS Summit New York:基調講演はAgentic AI VP / AIエージェント関連の大型発表が集中
🔑 2大テーマ:① AIエージェントの本番運用基盤 ② データベース・インフラの根本刷新
昨年2025年のAWS Summitは例年と比べて発表のスケールが段違いでした。「AIエージェントを作る時代」から「AIエージェントを本番環境で安全に動かす時代」への明確なシフトが感じられる内容で、基調講演では「ソフトウェアの構築方法が根本から変わる」というメッセージが繰り返されました。
また、AIだけでなくデータベースやVMware移行など、インフラレイヤーの刷新に関する発表も多く、ビルダーとして押さえておきたい内容が盛りだくさんでした。本記事ではエンジニアが特に注目すべき新サービス・アップデートを厳選して解説します。
- 01Amazon Bedrock AgentCore — AIエージェントをAWSで本番運用
- 02Amazon Aurora DSQL — サーバーレス分散SQLデータベースGA
- 03Amazon EVS — VMwareをそのままAWSで動かす
- 04Amazon S3 Vectors — RAGのコストを最大90%削減
- 05Amazon S3 Metadata — 全オブジェクトをSQLで分析
- 06Kiro — AIと協働できる新IDE
- 07Strands Agents GA — 3行でエージェントが作れるOSS
- 08Amazon EKS 100,000ノード対応
- 09EventBridge ロギング強化
注目サービス徹底解説
Amazon Bedrock AgentCore
今回のSummit最大の目玉といえる発表。LangGraph・LangChain・LlamaIndex・CrewAIなど、既存のフレームワークで作ったAIエージェントをそのままAWSにデプロイできる新サービスです。メモリ管理・ID制御・ツール統合・オブザーバビリティなど7つのコアサービスをセットで提供し、エンタープライズグレードのセキュリティも標準搭載。エージェントのコンテナ化→ECRへ登録→デプロイというシンプルなフローで本番運用できます。AgentCore SDKを使えばデコレーターやコンフィグを追加するだけで既存コードに組み込めます。また、SalesforceやSlack・Jira・Asanaなど人気ツールとのワンクリック連携機能も搭載。AWS Marketplaceに「AIエージェントとツール」という新カテゴリも追加され、エコシステムが急速に拡大しています。
Amazon Aurora DSQL
re:Invent 2024でプレビューが発表され、AWS Summit前後にGAとなった注目のデータベースサービス。従来のRDBは1台の筐体でクエリ処理・トランザクション管理・ストレージを担っていましたが、Aurora DSQLはこれらを独立したマイクロサービスとして分離し、各コンポーネントが水平方向に独立してスケールできる設計です。シングルリージョンで99.99%、マルチリージョン構成で99.999%の可用性を実現。マルチリージョン構成では2つのアクティブリージョンに加え「ウィットネス」リージョンが障害時のタイブレーカーとして機能します。インフラ管理が不要なサーバーレス設計で、接続数の増大にも数万〜数十万のQuery Processorが動的にスケールするため上限を気にする必要がありません。AWS Summit Japanでは専用セッションでアーキテクチャが詳しく解説され、多くのエンジニアが注目しました。
Amazon EVS(Elastic VMware Service)
Broadcom社によるVMware買収以降、ライセンスコストが地域によっては最大1,500%もの値上がりとなり、多くの企業がVMware環境のクラウド移行を迫られています。そこに登場したのがAmazon EVS。VMware Cloud Foundation(VCF)をAWSのVPC内のEC2ベアメタルインスタンス上でそのまま動かせるサービスです。リプラットフォームやアプリケーションの再設計が不要で、既存のVMwareスキル・ツール・運用方法をそのまま活用しながらAWSのスケーラビリティを享受できます。ガイド付きワークフローにより数時間でVCF環境をデプロイ可能。Amazon FSx for NetApp ONTAPなどの外部ストレージとの統合や、Veeamによるバックアップにも対応しています。AWS Summit Japanでもプレビュー開始が発表され(2025年6月9日パブリックプレビュー開始)、その後8月にGAとなりました。
Amazon S3 Vectors
S3に「ベクトルバケット」という新しいデータタイプが追加されました。これまでRAGを構築する際には専用のベクトルデータベース(Pinecone・Weaviate・OpenSearch等)を別途用意する必要がありましたが、S3 Vectorsではベクトルデータの保存とクエリをS3に直接行えます。PutVectors・QueryVectorsなどの標準的なAPIを提供しており、従来アプローチと比べてコストを最大90%削減できるとされています。Amazon Bedrock Knowledge Bases・SageMaker・OpenSearch Serviceとのシームレスな統合も提供。S3 VectorsからOpenSearch Serverlessへのデータエクスポート機能もあり、高度なハイブリッド検索が必要な場合は組み合わせて使うことができます。
Amazon S3 Metadata
S3バケット内のすべてのオブジェクトのメタデータを、ライブインベントリテーブルとジャーナルテーブルで一元管理できるようになりました。変更から1時間以内に自動更新され、SQLベースで既存・新規オブジェクト両方を分析できます。これまで「このバケットに何が入っているか」を把握するには独自の管理スクリプトを作る必要がありましたが、S3 Metadataを使えばシンプルなSQLで横断的に調べられます。大規模なデータレイクを運用しているチームや、S3上のデータ資産を棚卸ししたいチームに特に有効です。
Kiro(新IDE)
AWSが開発したVSCodeフォークの新IDE。Cursor・Windsurf・GitHub Copilotなどの既存AIコーディングツールと大きく異なるのは、「コードを書く」だけでなく「要件定義からAIと一緒に進められる」点です。「Specs」機能では自然言語で要件を入力するとエージェントが詳細仕様・設計・タスクリストを自動生成。「Hooks」機能はコード変更を自動検知して関連するドキュメント更新やテスト実行などを自動トリガーします。一般的な「バイブコーディング」を超えた、より構造的なAI協働開発体験を目指しています。
Strands Agents GA
AWSが中心となって開発するオープンソースのPython製AIエージェントフレームワーク「Strands Agents」がv1.0.0としてGAしました。最小3行のコードでAIエージェントを構築でき、デフォルトではBedrock上のClaude Sonnet 4が使用されますが、他社モデルにも対応しています。v1.0.0ではA2A(Agent-to-Agent)サポート・会話のデータ永続化・マルチエージェントワークフロー機能が追加。MCPクライアントの開発にも対応しており、AgentCoreと組み合わせてそのままAWSへデプロイすることもできます。
Amazon EKS 100,000ノード対応
Amazon EKSが1クラスターあたり最大100,000ノードまでスケールできるようになりました。これにより最大160万のAWS Trainium2アクセラレーター、または80万のNVIDIA GPUを1クラスターで活用できます。Kubernetesとの互換性と既存ツール統合を維持しながら、大規模LLMのトレーニングや推論インフラをEKS上に集約できるようになります。AI企業・研究機関・大規模推論ワークロードを持つ企業にとっては大きなアップデートです。
Amazon EventBridge ロギング強化
EventBridgeに詳細なロギング機能が追加されました。これまでイベント駆動アーキテクチャのデバッグは「なぜイベントが届かないのか」の原因特定が非常に困難でしたが、今回のアップデートでイベントのライフサイクル全体(発行→ルールにマッチ→配信→失敗)を詳細なログで追跡できるようになりました。地味ながら開発効率に直結する重要なアップデートで、SQS・SNS・Lambdaを組み合わせたイベント駆動アーキテクチャを使っているチームなら特に恩恵を受けられます。
新サービス一覧まとめ
| サービス名 | カテゴリ | 一言まとめ | ステータス |
|---|---|---|---|
| Bedrock AgentCore | AIエージェント | どのフレームワークのエージェントもAWSで本番運用できる | Preview |
| Aurora DSQL | データベース | 無制限スケール・99.999%可用性のサーバーレス分散SQL | GA |
| Amazon EVS | 仮想化・移行 | VMwareをそのままAWSのVPC内で動かす | GA |
| S3 Vectors | ストレージ | RAGのベクトルをS3に直接保存・コスト最大90%削減 | Preview |
| S3 Metadata | ストレージ | 全S3オブジェクトのメタデータをSQLで横断分析 | GA |
| Kiro | 開発ツール | 要件定義からAIと協働できる新IDE(VSCodeベース) | Preview |
| Strands Agents | フレームワーク | 3行でエージェントが作れるOSSフレームワークGA | GA |
| EKS 100Kノード | コンテナ | 1クラスターで超大規模AI/MLトレーニングを実現 | GA |
| EventBridge ロギング | 監視・デバッグ | イベントのライフサイクル全体を詳細トレース可能に | GA |
ビルダーとして今すぐ注目すべき3選
今回のSummitで特に印象的だったのは、AIの「使う」から「動かす」へのシフトです。AgentCoreもStrands AgentsもKiroも、エージェントを開発・デプロイ・運用するためのツールが一気に揃いました。これまで「実験段階」だったエージェントAIが、いよいよ本番プロダクトに組み込まれる本格フェーズに入ったといえます。
また、Aurora DSQLやEVSなどインフラレイヤーの刷新も続いています。データベース選定・VMware移行・大規模ML基盤など、アーキテクチャを見直すきっかけとして今回の発表は非常に参考になる内容でした。

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